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モンティ・ホール・ジレンマ (2002/01/26)

 ここにある問題。(元ネタは、ポール・ホフマン著、平石律子訳『放浪の天才数学者エルデシュ』草思社、だそうな。)
分かり易く問題を書き換えてみました。

【問題】

『3つの扉』

 今、あなたの目の前に3つの扉がある。そのうち1つの向こうには、賞品が隠されている。

司会者:「さあ、扉を1つ、選んでください。」
 あなたは、真ん中の扉の前に立った。
 すると、司会者はあなたが選ばなかった右の扉を開けた。そこには何もない。
司会者:「右の扉はハズレでした。」
司会者:「残る扉は真ん中の2枚になりましたが、本当に、真ん中の扉でよろしいですか?」

 さて、あなたは扉を変えますか? 変えませんか?


【解答】

 ここに解答があるが、勝手に付け足しをする。

 ポイントは、司会者が、残りの2つのうち1つのハズレを教えている点にある。

 ここで、ちょっとした例を考える。

  • 1本の当たりがある3本のくじをX君、Y君が交互に引いてみる(X君が先手とする)
    1. 先手X君が一回目に当たりを引く確率は1/3
    2. 後手Y君が一回目に当たりを引く確率は1/3
    3. 先手X君が二回目に当たりを引く確率は1/3

  • Y君が当たりくじがどれか知っていると
    1. 先手X君が一回目に当たりを引く確率は1/3
    2. 後手Y君が一回目に当たりを引く確率は2/3

  • つまり、後手のY君がワザと間違えてハズレを引いてやると、
    1. 先手X君が一回目に当たりを引く確率は1/3
    2. 後手Y君が一回目に当たりを引く確率はゼロ
    3. 先手X君が二回目に当たりを引く確率は2/3

 X君をあなた、Y君を司会者に置き換えれば、上の『3つの扉』の問題と等価となる。つまり、左の扉に変えた方が、賞品に当たる確率は高くなる

 「あれ? どっち選んでも五分五分じゃあないの?」と思った人は次の場合を考えてみるといいかもしれない。

  • 上の3本のくじの問題の続きで、X君が引いた2本のくじを横でみていたZ君に渡すとする。
    (Z君はくじの当たりハズレは知らない)

    1. 1本目と2本目の区別がつく時、
      1. 1本目が当たりである確率は1/3
      2. 2本目が当たりである確率は2/3

    1. 1本目と2本目をごちゃ混ぜで渡されて区別がつかない時、
      Z君は、どちらのくじが当たりであるかは五分五分であると考えるしかない。

 この3つの扉の問題、当時は数学者の人でも「どちらの扉でも当たりの確率は五分五分」と答えた人が多かったそうだ。

 確率的に五分という環境は、一般に信じられているほどには多くない。また逆に、『確率的に五分』なことが必ずしも『両者に公平』な条件とはならない。
 アプローチは異なるが、C・S・フォレスターの有名な帆船海洋冒険小説であるホーンブロワシリーズの短編『勝ち目五分』(『海軍士官候補生』ハヤカワ文庫)は、腕力に劣る主人公が『両者に公平』ということと『確率的に五分』ということの微妙な差異を巧みに利用した話として面白い。
 もっとも、食い意地が張った僕の場合は、「給食で皆が同じ分量を食べることがはたして真の公平といえるのか?」とかの方が実感があるけど・・・。


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