令和2年9月12日インタビュー


 薩摩藩、島津忠良の言葉です。
 「昔から賢者の教えや学問を知っているだけでは意味がない。実行してこそ役に立つものだ」
 (日新公いろは歌の一節)

 常に新しいことに挑戦している広瀬 鈞さん。
 以前は樹齢百年近い梅の「盆梅展」を開いたり、花卉栽培でストックの花をハウスで栽培し、いち早く市場に出したりと多忙な日々を送って見えましたが、今回は、明知下でアスパラを栽培している話を聞き伺いました。
 アスパラにとどまらず、ブドウ、みかん、そしてパパイヤと挑戦は数知れず。


 
作るのが楽しいと話す広瀬 鈞さん(令和2年9月12日農場にて撮影 ) 




区民だより編集委員・伊藤 (以下 伊藤) : アスパラ栽培ついて聞かせて下さい。

広瀬 鈞 (以下 鈞) : 刈谷に1反畑で露地栽培をし、明知下で20アールハウス栽培をしている。ハウスの方が主流だ。
 できるだけ農薬は使わないようにしている。牛糞や鶏糞を使用して自然栽培を心掛けている。
 刈谷の境の人が「アスパラの露地栽培はできないか。」と見学に来た。アスパラは病害虫の被害に弱い。最近の酸性雨に当たると茎枯病が発生する。だから雨に直に当ててはだめだ。一番低コストのトンネル栽培をやってみたら今のところ大丈夫なので、この方法を教えた。
 ハウス設備はコストがかかる。
 また、冷たい風に当ててもだめ。
 ここの水は愛知用水を使っているけど、泥水なのでろ過しなくてはならない。
 排水が悪いと根腐れを起こしてしまう。用水と排水が大切。

   
露地栽培(令和2年9月6日撮影)    ハウス栽培(令和2年9月12日撮影) 


区民だより編集委員長 広瀬 (以下 広瀬) : ハウスの横にタンクがありますが、愛知用水をろ過しているのですか?

広瀬 鈞 (以下 鈞) : いや、水は井戸水をくみ上げて使っている。

伊藤 : アスパラと言うと北海道というイメージがあるのですが、暑い明知でも栽培できるのですね。

 : 今は佐賀県が生産が多い。愛知県では豊橋や豊川でも生産が増えている。 
 最近赤いアスパラが人気だよ。赤いアスパラには、アントシアンが多く含まれていて、湯がくと緑色になり、緑色より柔らかく甘い。赤いアスパラは70本植えている。

 
 収穫されたアスパラと赤いアスパラ(令和2年8月22日撮影)

伊藤 : 1日でどのくらい生産できるのですか?

 : 一束3~5本入りで100束ぐらい。アスパラは楽しんでやればいいと思っている。


めずらしいブドウ「天山」

伊藤 : めずらしいブドウを作っていると聞きましたが・・・

 : 天山(ベンジャーガン×ロザリオビアンコの交配種)というブドウで、種なしで皮ごと食べられるぶどうだよ。
 一粒30gある大粒の楕円形のブドウです。
 このブドウは成熟期に裂果が生じるので、栽培が難しい。 
 この辺りでは作っている人はいないと思う。
 親のベンジャーガンが裂果する特徴があるようだ。

 
 Yの字棚と粒の大きさにびっくりした天山(令和2年8月22日広瀬農園にて撮影)

 裂果は降雨による果粒内水分の増加によるものと思われるが、過リン酸石灰と塩化カリウムを配合して蒔いたところ、今のところ裂果はない。

 雨水は酸性雨が多いから、石灰を施す。
 雨の中にどれだけ窒素分があるか計量して、その分に見合った肥料を与えている。
 そのくらい気を使っている。

伊藤 : 栽培方法もユニークですが、どうしてこのブドウを作ってみようと思ったのですか?

 : Yの字の棚づくりで栽培している。
 年齢を重ねると上を向いて作業するのは大変。
 その点この方法だと立ったまま作業ができる。

伊藤 : 入口にあるのはみかんですか?

 : 宮崎産の「みはや」という新品種の早生みかんだよ。
 果皮は赤橙色で、酸味がなく、糖度が高い。果汁がたっぷりで甘くてジューシー。
 果実は普通のみかんより一回り大きく、皮が薄い。
 90本植えたが、まだ出荷はしていない。
   
 
  早生みかん「みはや」(令和2年9月6日撮影)


トロピカルフルーツ「パパイヤ」登場!

 : 今ちょっと力を入れているのがパパイヤです。
 今年の春に苗木を買って植えたところ、ご覧のように実がなった。
 生育は旺盛で、病害虫の心配もほとんどない。

広瀬 : みよしにパパイヤは意外ですね?

 : まだ、どこにも出荷していないが、珍しいものなので、刈谷のハイウェイオアシスに置いてもらおうと交渉に行ってきた。
 外は緑色だけど、中はオレンジ色をしている。
 うまくいけば、これから苗木を増やしていこうと思っている。 
 
   今、成り頃のパパイヤ(令和2年9月12日撮影)

編集後記

鈞さんのところに取材に行くと、次から次へと新しいもの、めずらしいものが出てきてビックリでした。
天山のブドウは、色から形、粒の大きさに圧倒されました。
「変わった作物を作ると消費者は買ってくれる。めずらしい金額の高いものから売れる。」そう鈞さんは言ってました。
「もう高齢だからこれ以上増やすつもりはない。」と言ってましたが、なんの、なんの。
いくつになっても新しいものへの挑戦。
それが鈞さんの若さの秘訣なのだろう。
知識や技術を身につけて、新しいことをとことん楽しむコツを、ちゃんと持っている方だと思います。

(区民だより編集委員 伊藤)


場所  広瀬 鈞農園
聞き手 区民だより編集委員長・委員
 


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