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ラリーナビゲーター回想録
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 久しぶりにFDの整理をしていたら、昔やっていたラリーの参戦記録を収めたExcelファイルが、ひょこり出てきた。パソコンを初めて買ったときに作ったものだが、妙に懐かしくなったので、ちょっと駄文を書いてみる気になった。現在、ラリーとは一切関係のない生活を送っているので、多少のことは戯れ言として許されるであろうという浅はかな考えと、貴重なネットスペースを無駄使いすることに全く気が引けないわけではないが、筆者の自己満足故、お許し願えれば幸いに思う。

簡単な2次補正の計算方法

 アベレージ速度時速36kmは秒速10mであるので、距離10mの誤差は時間に換算すれば1.0秒の誤差である。ナビを始めたばかりの頃は、電卓での補正もままならなかったどころか、他の基本的なことも疎かになる危険があった(恥ずかしい話だが)。かといって、コマ図間距離とトリップとを見比べて、明らかに誤差があるのにそれを気にせず放っておくのも気が引ける。そこで、概ね指示速度が36km/hであれば『10mあたり1秒!』で30m短ければ3秒遅れという、実に簡単な2次補正の取り方をしていた。

 9km/h → 4.00秒/10m
12km/h → 3.00秒/10m
18km/h → 2.00秒/10m
36km/h → 1.00秒/10m
48km/h → 0.75秒/10m
60km/h → 0.60秒/10m
 ナビによっては、この時間換算を表にして持ち歩いている人もいたが、僕の場合、咄嗟の時に見る時間がないので、この程度を頭にいれておいて暗算で済ませた。ここで、気をつけなければならないのは、ローアベレージの時は略算の誤差が大きくなることであるが、そういう時はゆっくり電卓で合わせておく。
 一見いいかげんに見えるが、やってみるとこれがなかなか具合がよい。僕の場合二次補正はラリコンに一切入力せずに、「ファイナル○○秒で入って」と口頭でドライバーに伝えていたのだが、この方法と合わせると、コマ図先すぐのチェックでも対応が出来るし、忙しい時でも咄嗟に再補正が計算できる。なによりも良いのは、距離に比例して随時補正を加えていくことが簡単に出来ること(そのため、事情を知らないドライバーからは僕の補正はころころ変わるといわれたことがあったが)。電卓に向かわずにライン取りなどのドライバーの走らせ方が常時観察できるので、補正の傾向がつかみやすい(普段電卓を使ってないとミスした時のリカバリーがドラにばれる欠点もあるが・・・)。区間距離のメモと合わせて各々の補正傾向を自分なりに頭に入れておくことができる。実際のラリーではコマ図先延々と走らせた後にチェックなんてこともあるので、傾向を予測することも結構重要だったりする。SS・ハイアベ・ナビセクションを設定の妙でうまく組み合わせたイベントが多かった某シリーズ戦で、さして優秀でもない僕がある程度結果が残せたのはこの方法(優秀なナビの方々はそんな工夫は要せずに楽々とこなすのだろうけど。)とドライバーや周りに恵まれたおかげだったと今でも思っている。

ラリコンの思い出

 ナビを始めた当時、変なジンクスがあった。『RP900を使うと成績が良い。』。当時はラリーブームでドライバーは過剰気味、ナビは体ひとつあれば引く手数多という時代だったので、どのドライバーの横でもひょいひょいと乗った。それはそれでいろいろと面白かったのだが、組む人によって異なるラリコンを装備しており、その都度覚えなくてはならなかったことが悩みの種だった。初年の7戦で、6人のドライバーと、JX-555、CRT4500、RC-NONO、RP900の4機種のラリコンを使い分けたのは若干荷が重かったかなと今では思っている。その反面、機種に依存する機能を使わず、手前で済ます癖がついたのは後々を考えると良かったような気もする。RC-NONOで操作方法を覚えた人間なので、シーケンシャルに操作できるタイプが好きだったせいもあるだろうが、RP900を使った時が一番結果が良かった。RP900を装備していたドライバーが経験豊かだったこと、夜勤開けの無理を押して出場の機会を与えてくれたことにも感謝したい。
 特ナビもいろいろ対策を考えたが、ファイナルの代わりに計算通過時刻がリアルタイムで表示出来るラリコンがあるらしい(確かテンダーのラリコンだったと思う)と聞いて、これならば、計算通過時刻を表示させながら時間走行を処理できるので便利そうだなと思ったものである。当時は頭痛の種だったが、今思えば面白い設定だったと感じる。

スペシャルステージ三番勝負

 最後のシーズンを除いて、不思議とSSラリーはすべてCクラスでのエントリーだった。2年目の年は、縁あって通年で乗せてもらえるドライバーが現れたが、こちらのナビミスが多くて途中でお暇をいただいた。ドライバーの成長時期とナビゲーターの成長時期は、若干の食い違いがあるようで、同じ頃からラリーを始めた人間同士のクルーがなかなか結果を残せないのはそのためなのかもしれない。後の年の上級イベントで他のベテランナビとコンビを組んで結果を残したと聞いたが、ドラが絶好調だったこの年、何度かメダルを貰い損ねていることが申し訳なく、今でもそちらの方角に足を向けて寝られない。有視界走行が常だった当時、右のブラインドコーナーの読み上げはコーションの読み上げとともにSS中のナビの大きな仕事のひとつであったと思うのだが、この時のドライバーが強く要求してくれたおかげで、僕の身についたようなものである。

余分の二年の始まり

 お暇をいただいた後、別のドライバーがナビを探していたので、いい機会だと思って、先に述べた方法を試してみたら、偶然にも初メダルを頂いた。進学が決まっていたのでスポット参戦のこのイベントと前々から頼まれていたこの年最後のイベントでナビは最後にするつもりだったが、シーズンオフに1本の電話が自宅にかかってきた。今では優秀な若手ナビを数人輩出している某大学の自動車部に籍を置く人間からだった。常々ナビがいないなら自分のところから引っ張って来ればいいと思っていたので、「ライセンス更新してないから乗れないよ」とそっけなく答えたつもりだったが、「なら、(ウチの自動車部で)手続きするよ」。聞けば、イベントの日にちが差し迫っているとのこと。あくまでもスポットで次戦は別のナビを探すことを条件に出場したんだが。後は御察しの通り。

最後の一年

 思うところはいろいろあったが、ナビゲーションが落ち着き始めてる時にドラを変えたくないなと思ったので、この年も前年のドラと組むことに決めた。強く誘っていただいた1昨年のドラとはもうひとつ上の上級イベントでいっしょに組んで数戦参戦することで承諾をいただいた。クラブの社会人の人たちを見ていて、ラリーと仕事の両立は僕には無理だなと思っていたので、この年を最後に決める。初戦のローアベ(事情によりSSが設定できなかったらしい)ラリーで思いのほかいい成績が残ったので、ひょっとしたらと思っていたら、ひょっとした。下手でもやってみれば結果が残るものである。年間表彰式が、追加実験と重なって出られなかったことが残念で仕方がない。

 最後に、これからラリーを楽しむ若い人達のためにも救急体制の更なる充実、特に、専門の医師による現場での判断体制の充実を第三者からで恐縮だが切に願う次第である。

(初稿:2001/12/10、加筆:2002/07/31)

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